日本政府「AI専門家を年100人育成」 AIで変わる未来とは

日本政府「AI専門家を年100人育成」 AIで変わる未来とは

18年12月20日、共同通信社の報道によると、総合科学会議・イノベーション会議(政府機関・安倍晋三首相が議長を務める)は人工知能(AI)の分野で世界トップレベルの人材を年100人育成することを発表しました。それにともなってAIの国家戦略を19年の夏に策定する見通しです。諸外国においてもAIに関わる戦略が進んでいます。各国政府はAIに何を期待し、未来はどう変わっていくのでしょうか。最新のテクノロジーがもたらす恩恵とは何なのでしょう。

AI立国・英国が取り組む重要課題

日本より先駆けて、諸外国ではAI戦略の具体化が進んでいます。
世界を見渡すと、とくに欧州での動きが活発化しています。

18年4月に英国が発表した「AI Sector Deal」によると、AIの恩恵を英国全土に普及させるために日本円で約1,450億円(※民間からの投資を含む)の投資が行わるという。

その結果、2030年までにAIによる投資で少なくても約3・2兆4千億円(※日本円換算)の経済効果をもたらすとして、英国が取り組むべき重要課題に位置付けられています。

2025年問題と生産性の向上

2025年問題とは、約800万人いる団塊の世代が75歳を迎え、約2,200万人が後期高齢者になります。その結果、「労働力不足、社会保障と年金のバランス、医療・介護負担の増加」など、さまざまな社会問題が避けられない危険な状況になっています。

これまで誰も経験してきたことのない未曽有の危機にどう対応していくのか。
深刻な社会情勢への対応のため、出入国管理法改正や女性・高齢者の社会進出などが行われています。生産性の向上、1億総括用が叫ばれることもそうです。RPA(ロボティックプロセスオートメーション)、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)などの技術革新への投資も政府主導のイノベーションです。

2025年までには約600万人の労働力不足が予想されています。
とくに、サービス業に続き、小売業、農林水産業の順に人手不足が予想されています。

この人手不足をどう補っていくのか。

  • ・働く女性を増やす
  • ・働くシニアを増やす
  • 日本で働く外国人を増やす
  • 生産性の向上

この4つが柱になっています。

この中で、政府が発表したAI専門家を増やすというニュースは、「生産性の向上」につながっています。一昔前には、人間に変わって人工知能が仕事を奪うのではないかと恐れられていましたが、現時点では違います。
足りない労働力に変わって、テクノロジーを導入して生産力を上げることが目的です。

すでに、あらゆるビジネスの現場でAIなどのテクノロジーが活躍しています。

テクノロジーが労働力不足解消の起死回生ツール

AI(人工知能)を身近に感じて生活しているでしょうか。
AIという言葉ばかり先行しているようですが、実社会にドンドンと取り込まれ活躍の場を広げています。

■コールセンターの顧客満足度・効率化の向上

IBMのワトソン(AI)をみずほ銀行などのメガバンクが導入しています。
ワトソンとは、「質問応答・意思決定支援システム」です。コールセンターに導入することで、オペレータとの会話を解析し、質問に対する答えと、関連する情報を表示してくれます。その結果、顧客対応時間15%の減少と顧客満足度の向上を実現しています。
また、対応時間を減らすことで、オペレータ不足を解消します。

■検索エンジンの最適化

Googleで検索をして知りたい情報を拾う。何気なく使っている検索エンジンにもAIが利用されています。検索されたキーワードからサイトの特徴を認識し、学習を行うことで質の高いコンテンツを判断し、最初のページから順に表示させています。また、コピーサイト、有害サイトなど質の低いコンテンツをAIが判断し、削除しています。利用者がより便利に探したい情報がすぐに見つかるのは人工知能のおかげです。人手では不可能な作業です。

人工知能は悪魔なのか天使なのか

イーロンマスクが「AIは悪魔を召喚する」と言いましたが、このままAIが進化し、ビッグデータやIoT、RPAに取り入れられていくとどんな未来が待っているのでしょうか。

スポーツでは誤審がなくなり、車の運転も必要なく、お店の窓口も、営業も全て人工知能が行うのでしょうか。2045年問題があります。人工知能の発達が人間の知性を超え逆転すると予想されている問題で、シンギュラリティ(技術特異点)と呼ばれています。

人工知能がみずからを改良し、また新しい人工知能を人工知能が生んでいくことが可能になり、人間に取って代わると考えられています。

その結果、人間にしかできなかった判断を人工知能が行うようになり、戦争決定も政治判断も人間の生活も大きく変わるかもしれません。

未来は分かりませんが、現時点ではAIの恩恵ははかり知れないほど大きなものです。医療分への導入で助かる命が増えるので、天使にもなります。
“人間中心の原則”で発展していくことを祈るばかりです。